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Journal Club2022.04.29

英語論文ゼミ③古くて新しい薬:ワルファリンの阻害様式

今回のゼミは抗血液凝固薬(血をサラサラにする薬)ワルファリンがどのように標的分子を阻害しているかを解明した論文です。

ワルファリンはめっちゃくちゃ古典的な薬で、その発見は1920年代にまで遡ります。

 

1920年代のアメリカで、カビが生えたスイートクローバーを食べた牛が出血多量で死亡してしまう奇病がアメリカで流行り、原因は不明でしたがスイートクローバー中毒と呼ばれていました。この謎の中毒に困った酪農家さんがウィスコンシン大学のLink博士のもとに助けを求め、トラックいっぱいのスイートクローバーと牛の死体を持ち込んだことで原因物質が血液が固まるのを阻害するジクマロールであることが明らかになりました。

特にネズミに対し出血毒性が強かったため、ジクマロールをもとにしたワルファリンが殺鼠剤(ネズミ駆除用の毒餌)として開発されました。元々は毒餌として使用されてきたワルファリンですが、正しく服用すれば抗血栓治療にも使えるため、人の医薬品としても1950年代から使われるようになったという経緯があります。まさに毒と薬は紙一重という良い例ですね。

 

発見からおよそ100年が経つワルファリンですが、現在も医薬品として一般的に用いられています。しかしながら、上記のように投与量が多すぎると出血多量を引き起こすため、適切な投与量の個人差が大きく投与量のモニタリングが重要な薬としても知られています。個人差の原因として、ワルファリンの標的分子VKORの遺伝子多型(polymorphism)が知られています。


今回の論文はワルファリンがどのようにVKORを阻害するかに焦点をあてたin vitro試験が中心の「

Competitive tight-binding inhibition of VKORC1 underlies warfarin dosage

variation and antidotal efficacy」を6年生が紹介してくれました。


この論文はblood advances誌に2020年5月に発表されました。


引用元

https://doi.org/10.1182/bloodadvances.2020001750

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